“絶対音感”ならぬ“絶対嗅覚”は存在するか?
蝉の声で目覚めたかと思っていたら、いつの間にか、虫の声に夜の涼しさを感じる今日この頃。季節の変わり目、お元気でお過ごしでしょうか?
今日は「“絶対嗅覚”は存在するのか?」についてお届けします。
“絶対音感”と呼ばれる感覚について見聞きしたことのある方は多いかと思います。音を聞いただけでその音階が分かるというもので、アーティストや音楽を嗜んでらっしゃる方々に多いそうです。では、同じように“絶対嗅覚”というものは存在するのでしょうか?
結論から申し上げますと、“絶対嗅覚”というのは存在しないそうです。音の場合はドからシまで12の音階しかありませんが、匂いは優に数千を超える種類がありますので、嗅いだことのない匂いも多くある訳です。匂いの構成を推測する場合、その判断は嗅いだ経験のある匂いの中からでしか出来ませんので、そこに絶対的な基準を設けることがそもそも難しいという訳です。また、匂いの感じ方は人それぞれで、「『A』と『B』の香りを混ぜれば『C』の香りになる」と考えて調合した香りでも、人によっては、それが『D』にも『E』にもなり得ることも、基準を設けにくい理由の1つです。これは味覚に置き換えてみると分かりやすいかもしれません。例えば、「プリンに醤油をかけるとウニの味がする」「アボカドに醤油をかけるとトロの味がする」ということをよく耳にしますが、それを試した方が、100人が100人ともそう感じるわけではないのと同じです。
このように、絶対嗅覚というものは存在しないのですが、嗅覚を鍛えることで感覚を研ぎ澄まし、それを生業としている方々がいらっしゃいます。それが、『調香師』と呼ばれる方々で、多くは香料メーカーや香水メーカーなどで活躍してらっしゃいます(匂いに関する資格として、国家資格では『臭気判定士』、民間の資格では『日本調香技術士検定』などがありますが、『調香師』そのものに資格は不要です)。一流の調香師ともなると、数千種類に及ぶ匂いを嗅ぎ分けることが出来、それらを巧みに調合することで、『シャネルの5番』のような、後世にも語り継がれる香りを生み出すのです。また、自身に蓄積された膨大な情報を基に、香りを嗅いだだけでその構成を推測することも可能と言います。一方で、嗅覚というものは非常に繊細で、温度や湿度だけでなくその日の体調によっても感じ方が影響を受ける為、体調管理を怠らないことが非常に重要だそうです。
もうすぐ食欲の秋です。さんまの塩焼き、焼き芋、松茸ごはん…絶対嗅覚はなくとも、美味しいものの匂いは簡単に嗅ぎ分けられそうです。嗅覚と味覚で季節を堪能したいですね!