川で海(磯)の香りがする原因についての考察
「今日は半袖?長袖?」と、洋服選びに迷う季節を迎えた京都からお届けします。
今回はスタッフの知人から届いた疑問に答えます。同じように感じている方もおられるのではないでしょうか?
『自宅近くの大きな川の上を通ると、いつも海の匂いがします。海が川に流れ込んでいるなら話はわかるのですが、その逆なのに海の匂いがするのがとても不思議です。なぜなんでしょう?』
日本の海で感じる、いわゆる“磯臭い”においの大きな原因は、『トリメチルアミン』や『ジメチルスルフィド』などの成分です。『トリメチルアミン』は言わば“魚の腐敗臭”で、息絶えた魚が沿岸等に打ち上げられたり、港のように海流が影響されにくい場所に引き寄せられることで、腐敗が進みにおいの原因となっていると考えられています。そしてもう一つの『ジメチルスルフィド』は、海洋プランクトンなどによって作られるもので、海苔の香り成分としても知られております。実は、この『ジメチルスルフィド』は、湿地などに生息する「ミズゴケ」などでも作られるものなのです。つまり、川の近くで磯の香りを感じられたのは、その川(もしくは川周辺)にミズゴケが生息していたことが原因の可能性がある訳です。
余談ですが、日本の海は磯臭く感じるのに対して、海外、特に南国の海ではそこまでにおいを感じないのには、各々の環境・地形が関係しているそうです。日本には多くの川が流れておりますが、その大半は“急”で“短い”という特徴があります。その為、山や森林から染み出した植物性プランクトンが一気に海に放出されることになり、それを餌とする動物性プランクトンが増えることで磯臭いにおいの原因になっていると考えられます(日本沿岸の海があまり透き通っていないのも、プランクトンの多さが一因です)。一方、南国における川は、“大きく”“ゆったりとした流れ”のものが中心です。その為、海に流れ込む植物性プランクトンが日本よりも少なくなりますので、動物性プランクトンもさほど増えることがなく、結果として磯臭さをあまり感じない原因になっていると考えられます。
これまで、海を見ながら「あ~、いい匂い!」と清々しい気持ちになっておられた方を複雑な気持ちにさせてしまったかもしれませんね。どうぞ、海より広い心で受け止めてください!
匂いや香りに関する疑問を解き明かします。ぜひご連絡ください!