匂いへの慣れについて
例年であれば、紅葉情報を眺めながら、『どこが空いているかしら』などと行き先に思いを巡らせている頃なのですが、今年は『はやり外出は控えるべきか…』と躊躇してしまいます。樹々が美しい変化を見せている秋の京都からお届けします。
よそのお宅を訪問すると、それぞれ独特の匂いがしますよね。「うちの家は匂いがしないなぁ…」と思いがちですが、実際には鼻が慣れているだけで、他人からするとちゃんと匂いを感じているのです。また、口臭や体臭などは、周囲の人は強烈な匂いを感じていても当の本人にはその自覚がない…ということもしばしばです。この、「慣れて匂いが分からなくなる」というのは、どういうメカニズムなのでしょうか?
端的に言えば、危険を察知する能力を保つ為なのです。「匂いを感じなくなる」という現象だけで見ると、むしろ“危険を察知出来ていないのではないか?”と思われるかもしれません。しかし、匂いに慣れるというのは、その匂いを日常的に(もしくは継続して)嗅いでいるから起こる現象とも言えます。そして、「日常的に嗅いでいるのなら、それは危険な匂いではない」として、その匂いに対する感覚を鈍らせることでそれ以外の匂いに敏感に反応出来るようになる訳です。つまり、裏を返せば、自身の口臭や体臭に気付けている内はまだいい方で、気付いていない場合はそれだけ匂いが常態化してしまっているということでもあるのです。
なお、匂いの種類によっては、“慣れやすい匂い”と“慣れにくい匂い”があるそうです。“慣れやすい匂い”とは、いわゆる『有機物(炭水化物やタンパク質、脂肪など、生物内で作り出される物質)』に由来する匂いで、これは、有機物に由来する匂いであれば、それがたとえ臭いものであっても身体にとって危険である可能性は低いからだそうです。先ほど挙げた口臭や体臭のほかには、納豆やくさや等の食品、また、牧場の匂いなどがこれに当たります。一方で、“慣れにくい匂い”とは、有機物以外の物質である『無機物』に由来する匂いで、例えばアンモニアや硫化水素などの匂いが挙げられます。このような匂いは、(それを臭いと感じるかどうか別として)身体に危険を及ぼす可能性がありますので、自己防衛の為に“慣れ”が生じにくいのだそうです。
人間の身体いうのは素晴らしいものですね。同じ機能を持つロボットが作れたとしても途方もない費用が掛かるのだろうな…と思うと、自分の価値がずいぶん上がった気がしました。(笑)
参考資料:
・東洋経済ONLINE掲載記事(2018.06.28)
・exciteニュースコラム(2017.05.09)