「臭い(くさい)」が用いられる慣用句の語源
こんにちは!そろそろ観光シーズン本番を迎えようとしている秋の京都からお届けします。
秋と言えば紅葉ですね。深紅のもみじは本当に美しいですが、陽射しを受けて輝くイチョウの明るい美しさもまた素晴らしいものです。ただ、近くを通ると漂ってくる特有の臭いは苦手な方も少なくないのではないでしょうか。
今回は鼻では嗅げない3つの「くさい」のお話を。
「~~臭い(くさい)」と付く単語や慣用句は様々ございますが、今回はそれらの由来について3つご紹介致します。
まずは『きな臭い』についてです。この“きな”は「きな粉」とは全くの無関係で、『きぬ(布・衣)』に由来するという説、『毒薬であるストリキニーネの原材料「キナ」』に由来するという説など諸説ございます。前者の説によると、「布が焦げるにおいがする」ことから、火薬や硝煙のにおいがする場合、すなわち、「戦い(戦争)や事件が起こりそうな気配」を指すようになり、それが転じて「怪しい」という意味で用いられるようになったそうです。また、後者の説においても「毒薬=危険なもの」を指しており、『きな臭い』には「危険性や事件性などを察する」というニュアンスが含まれているようです。
次は『水臭い』についてです。「他人行儀・よそよそしい」という意味で用いられる言葉ですが、この由来には有力な説が2つございます。もともと『水臭い』には「水分が多くて味が薄い」という意味もあるのですが、水気が多くて味気ない(まずい)食べ物を“水臭い”と呼び、そこから転じて、愛情や絆が希薄である“味気ない”関係性を指すようになったというのが1つ目です。もう1つの説は、“盃洗”という風習に由来するというものです。これは、お互いに盃を交わしながらお酒を飲む際に、「盃を水で洗ってから交換する」というものなのですが、その場合、お酒と水が混ざり合い“水臭い”お酒となってしまいます。信頼関係があればわざわざ洗う必要もない、というところから、そうでない関係性を指して用いられるようになった、というのがこちらの説です。
最後は『胡散臭い』についてです。これも諸説あるようですが、有力なものの1つが、「烏盞(うさん)」という天目茶碗に由来するという説です(江戸時代には、「胡散」ではなく「烏散」という表記が用いられていたことが判っており、「烏盞」が変化したものと考えられています)。この茶碗は高価なものとして有名だったそうですが、年代や生産地がはっきりせず、本物かどうかが疑わしいものも数多く出回っていたそうです。そこから、「偽物くさいこと・どことなく疑わしいこと」を『胡散臭い』と呼ぶようになった、というものです。
古臭い、どん臭い、けち臭い、辛気臭い、陰気臭い、面倒臭い。実際に嗅ぐことは出来ませんが”臭い”が付く言葉。自分からも相手からも発せられたくないものです。でも、「照れ臭い」だけは、たまにはあっていいかもしれません。